格闘家
キックボクサーの親友の試合を見てきた。3年前くらいからほぼ仲間と欠かさず見に行っている。
今日はついにタイトルマッチだ。
メインイベントだ。
負けに負け、勝ち上がり、今一歩のとこでつかみ損ね、諦め、立ち上がり挑戦し、チャンスを掴み、また負け、また立ち向かい。。そんな姿を幾度となく見てきた。
最初に新宿コマ劇場での熱い試合を見て依頼、時間が経った。
社会人になって始めたお前は少しずつ勝てるようになった。
俺もあいつも結婚して家庭を持った。
お前は俺の結婚式の余興でキックしてくれた。
一番モテなかったあいつは最初に入籍、子供を作った。
家を買い、定住した。仕事もたまに嫌になりもした。
あいつは奥さん厳しくてたまにしか試合見にこれなくなった。
お前は年上の彼女と別れた。
俺もあいつも腹が少し出てきた。
酒も翌日に残るようになった。
笑って、愚痴も言った。
為替も株価も動き、景気も時代も変わった。給料も減った。
お前は悩み辞めようともした。
理想と夢を抱き、毎日悩み、葛藤した。
地元の海や緑、花や空が本当に美しいと思い始めた。
俺は相変わらずクソ生意気だった。
時々戦い、たまに勝った。
親も歳をとった。
知ってる人が死んでいき、葬式にも慣れた。
煙草もやめた。
随分、我慢も出来るようになった。
気付いたらあの時大人だと思っていた歳も過ぎた。
今日は素晴らしい試合だった。相変わらず硬派なお前は打たれ強く、相手を圧倒した。不器用なお前は、自分の枠を超えて、応援してくれている人の為に戦った。
お前に奇跡はいらない。
運命に立ち向かえ。
但し休んでいい、そろそろ辞めてもいいぜ。俺ならとっくに心が折れてるしな。
俺は勇気を貰ったよ。
後悔ないよう、生きようぜ、ヒーロー。
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