湘南ライフへ③

咳が止まった。。
そう気付いたのは湘南に引っ越してきてから１ヶ月程してからだった。都心に住んでいた時に風邪でもないのに年中ゴホゴホ言っていたのが止まったのだ。
海に近い湘南のしっとりとした空気がそうさせたのだろうか。
夜もぐっすりと眠れるようになった。家の回りには無駄な電灯は無く、静寂の中、虫の音が聞こえる。朝には心地好い日射しと、鳥の声がやってくる。
仕事の馬力も出てきた。
ある日の休日、俺は江の島で投げ釣りをしていた。夕食からは妹が家に遊びに来ることになっている。日中、釣果は優れなかったが、日が沈むと途端に魚の活性が上がり始めた。デカいキスが釣れ始めた。ビビッ！っという竿の感覚は病み付きになる。
季節は１２月。手が悴んでどうにも寒い。だが、とにかくもう夢中になる。家からすぐの距離にこんな場所を見つけたのだ。
『今夜のオカズを釣る』こんなサラリーマンの夢を手軽に、気楽に実現し気分は最高潮だった。
帰り道、海に浮かぶ江の島の夜景は美しかった。大橋を渡る人々を掻き分け、家路を急いだ。

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